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『バベル』、はあなたを混乱させる映画だ。 

観た人の数だけ、BAVELが存在する。

バベル




★ネタバレあり!!
『21g』を事前に観て、こりゃポール・ハギスの『クラッシュ』にも影響を与えたな

なんて思いながら、試写会場の厚生年金・芸術ホールへと足を運んだのですが、

この映画『バベル』は、そのクラッシュを更に世界的規模の衝撃と激突に深化させた

感のある、実にヘヴィーな映画でした。

モロッコの放牧民の少年が放った1発の銃弾が、3つの大陸の4つの言語、

4カ国の人々の魂を貫き、混乱と悲しみの果てにやがて僅かな希望の光を放ちつつ

静かに終わる物語り。ただ、この映画はかなり観る人を選ぶと思う。

これでもかと容赦なく圧倒的演出で描き出される人間の生と性。

そして排泄や流血が混沌と一体となってスクリーンに押し寄せてくる。

愚かさや寂しさ。貧困と虚栄。

欺瞞に満ちた豊かさやコミュニケーションが、音を立てて崩れ、観る者に圧し掛かる。

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日本を舞台としたシークエンスでは、日本人としてとても海外では観たくないと思わせる

ショッキングなシーンの連続だ。しかし、コレが実に良く描けている。

日本に1度しか来た事の無い監督が撮った画とはとても思えないのだ。

正確に言うと、観たくない日本がただそこにある。

それは、今この世界を生きる誰もが隠すことの出来ないリアルなのだ。

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この暴力的な才能の『アレハンドロ・ゴンザレス・イニヤリトウ』監督は、

実に繊細且つ大胆に、欺瞞と言う名のソフィスケートされた我々文明人の感性を、

計算づくで徹底的にぶち壊してくれるのだ。

時間軸をずらした編集と、手持ちのライブなカメラワーク。

静と爆音の効果音。映画の持つありとあらゆる手法を駆使して揺さぶられる。

そう言えば、音楽と撮影は、ともに『ブロークバック・マウンテン』のスタッフ、

『グスターボ・サンタラオヤ』と『ロドリゴ・プリエト』だ。
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曖昧な浮遊感と荒涼とした砂漠。失踪する車と置き去りにされる魂。

繋がり合うのに必要なのは、言葉ではなく【愛】なのに。

人種と言葉と性差と国境。超えることの出来ない、見えない壁。

近いほど解りあえない孤独な魂達。地球を構成する最も小さな単位の国家である家族が、

解りあえず愛し合えず、苛立ち彷徨う。モロッコの砂漠で、メキシコの荒野で、

そして摩天楼の東京で・・・。

TVや携帯、メール。あらゆるコミュニケーション手段がありながら、

何一つ解り合えないもどかしさ。そんな喧騒と静寂の中に描かれるチエコと日本の孤独。

愛と情熱を持ちながらも、自国では暮らせぬメイドのアメリア(アドリアナ・バラッザ)の

見事な愁いを含んだ演技に魅せられ、刑事(二階堂智)とヤスジロー(役所広司)の背中に

やり切れぬ孤独を見た。
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批判の対象になるであろうケイト・ブランシェットの放尿も、モロッコの少年のオナニーも、

そして菊池凛子の無軌道に見える性衝動と全裸のヌードも、この舌を噛みそうな

名前の監督の優しさだとしたら・・・。

そして、この映画には、見た人の数だけ解釈があってもいいと思う。

凛子演じるチエコの書いた手紙の内容は、刑事の二階堂智にしか分からない。

しかし、それを感じる人の数だけ『バベル』は確かに、そこにある。

散らかり混乱したジクソーパズルの最後の1ピースを埋められるのは、

人間の愛とイマジンだけだと思わせてくれる映画なのだから。

チキショウ!!ホントに映画ってやつは・・・。

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