『怪談』を、梅田ピカデリーで鑑賞。
げに怖ろしきは、人の心。
まだまだ残暑厳しい日が続く今日この頃。蒸し暑い日本の夏には、かき氷と蚊取り線香と怪談が良く似合うのだ。てなことで、行ってきたのがJホラーの旗手と評される『中田秀夫』監督の『怪談』。この映画は、ラフガデオ・ハーンの「怪談」では無く、名人円朝の落語の“怪談噺”『真景・累ヶ淵』をモチーフにしている。そして、『リング』『仄暗い水の底から』など、海外で高評価を受ける中田秀夫監督の和物がどれ位の怖さなのかが、鑑賞のポイントでもあります。
物語の発端は、江戸時代の下総は羽生の村から始まる。武士の深見新左衛門(榎本孝明)の家に借金の取立てに訪れた皆川宗悦(六兵直政)が、逆に新左衛門に切り捨てられて、累ヶ淵に沈めてしまう。やがて新左衛門は錯乱して妻を切り殺し自らも自害。お家は取り潰しとなる。残された男の子は使用人に引き取られ、宗悦の娘達も途方にくれることになる。 人気blogランキングへ

それから25年の月日が流れ、江戸の深川で煙草売りの深見新吉(尾上菊之助)は、宗悦の娘で三味線の師匠をする豊志賀と偶然出会うことになる。そして、それが全ての悲劇の幕開きとなるのだった・・・。
やがて豊志賀と暮らし始めた新吉は、師匠の豊志賀が芸を忘れ新吉との愛にのめり込んでゆく事を危惧するが、一人、また一人と生徒達は豊志賀の元を去って行く。そしてついに新吉が別れ話を切り出すが、逆上した豊志賀と口論になり、振り上げた三味線のバチで、豊志賀は顔を傷つけてしまう。その傷口がやがて怖ろしい腫れ物に変わって行くのだった。正に、バチが当たったと言うべきか・・・。
本作が映画初主演となる歌舞伎界のプリンス『尾上菊之助』の妖艶な色気。彼の運命を翻弄する豊志賀役の『黒木瞳』の怖いほどの儚い美しさと、凄味のある演技で魅せてくれる。また、美術監督『種田陽平』の作り出す江戸の世界観は素晴らしく、雨が雪に変わる移ろいや、降りしきる雨と長屋の風情に物売りの声が相まって、見応えのあるシーンを作り出している。特に圧巻は、豊志賀が死ぬ夜の江戸の夜空を彩る花火の息を呑む美しさだ。太鼓橋から長屋の屋根をパーンアップしたカメラが捉える隅田川の花火の画は、実に見応えがある。 ブログランキング

『リング』とは打って変った日本独特の怪談物の怖さを、監督の『中田秀夫』は見事に演出している。むしろ、恐怖とは冷静に距離を置き、ふとした一瞬に怖さを感じさせる。例えば、許されぬ定めの恋に落ちる豊志賀の三味線の弦が突然切れ、宗悦の位牌が倒れ落ちる所作に、和物の怖さ(恐怖ではなく)を感じさせるのだ。勿論、既に死んだ豊志賀が新吉の元を訪れ、死んだと聞かされ振り返ると、籠にのった筈の豊志賀が消え、覗き込んだ新吉の手を突然掴む手が!! 劇場騒然となったシーンだが、この手の脅かしのギミックより、泣かない赤子や錆びた鎌の方がよっぽど怖いのだ。
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- [2007/08/20 06:56]
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『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』
黄色いブラックコメディの秀作。
やっと夏らしい夏になってまいりました。レイトショーに持って来いの季節。で、梅田シネリーブルのレイトショーで観たのがこの映画『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』であります。
カンヌ映画祭「批評家週間」招待と聞いて「ほほー!」。なにせ、世界でもたったの7本しか選ばれないという激戦区の選考過程を経て、正式に招待されたわけですね。「大日本人」の「監督週間」とは、ちと違っております。また、うるさ方が多いキネ旬の批評もこぞって高評価。TYOの遅れてきた新人『吉田大八』監督に期待しての鑑賞です。
物語は、絶対女優に成ってやる!と故郷を飛び出した和合澄伽(佐藤江梨子)が、不慮の死を遂げた両親の葬式で、北陸の田舎に帰省することから始まる。和合家はちょっと複雑な家族構成であり、澄伽の実の妹・清美(佐津川愛美)と、後妻の連れ子である宍道(永瀬正敏)と妻の待子(永作博美)が、一つ屋根の下で暮らすことになる。かつて女優に成ることを父に反対され、父にナイフを突きつけた事件を妹の清美の漫画のネタにされた事を恨む澄伽は、徹底的にイジメモード全開で清美をいたぶるのだった。しかし、兄の宍道は、過去のある事が原因で澄伽を諌める事ができない。そして、チョー自己中キャラの澄伽は、さらに暴走して行くのだった・・・。 人気blogランキングへ
強いてジャンル分けすると、ブラック・コメディである本作は、吉田監督の絶妙の演出制球力と出演者達の怪演で、非常に高い完成度を見せる。監督曰く、ヒットではなくホームランを狙ってキャスティングしたという澄伽役の佐藤江梨子も、かなりのハマリ役と見た。なにせ、圧倒的プロポーションを見事なカメラワークで魅せてくれるので、澄伽の女王様振りが際立つのだ。携帯も入らない田舎町で、浮きまくる澄伽。そして、イジメに耐えながらも逆に冷静に姉を観察しつつホラー漫画のネタにする清美。その間で煮え切らない兄の宍道の不甲斐なさと、その妻待子へのDVの数々。しかし実は、じっと耐える妹と、さらに嫁の待子の方が、ずっと強くて怖いのだ。
上映中、何度も若い女性人の笑い声が場内に起こったが、男性達はちょっと引き気味。それが、ある意味この映画を象徴している。元々、「劇団・本谷有希子」を率いる新進気鋭の女流作家として注目される『本谷有希子』の同名の人気戯曲が原作である。そして、かなり本谷有希子自身が投影された脚本であり、女性が共感できるのも頷ける。
また、この強烈なインパクトの『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の、腑抜けどもは、世の男達全員を指しているのだろう。とほほ・・・。
シネリーブルでも8月半ばまでの上映、しかも8時55分からのレイトショーのみとなっているが、中々見応えのある秀作であることは間違いない。妹の清美が描くホラー漫画と実写が交錯するカット編集や、中島哲也監督の「嫌われ松子」「下妻」のカメラ阿藤正一の映像など、CM界をリードする才能が作り上げる新しい邦画の可能性を是非映画館でお楽しみいただきたい。
ちなみに、シネリーブルの会費は年間1000円ですが、1000円分のポイントが付き、提示で毎回300円引き、金曜日は1000円で鑑賞と、中々のお得感であります。もちろん、達也も入会しております。
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- [2007/08/02 07:53]
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